特集記事

株式会社 光アルファクス

半導体不足が社会問題になる今、供給を途絶えさせない技術商社がある。
株式会社光アルファクスだ。注文いただいたモノは必ず納め、コロナ禍にあっても顧客のラインストップを回避し続けた。さらにファブレスメーカーとしての顔もあわせ持ち、マテリアルの研究開発も推し進めるなど多面的な事業展開を強みとしている。その企業戦略について川井社長に伺った。

不確実性の高い時代だからこそ未来にありたい姿を描き挑みつづける

株式会社 光アルファクス
代表取締役社長
川井 啓 氏

株式会社 光アルファクス
本社

会社概要
所在地 大阪市北区中之島2-2-2
TEL 06-6208-1811
設立 1954年2月(創業1948年8月)
従業員数 300名
資本金 3億2,000万円
年商 489億円(’23/3期)
事業内容 電子・電気機器販売
①電子デバイス(半導体,集積回路,液晶表示装置等)
②コンピュータ,周辺機器
③電機,計装,制御,FA機器,画像関連機器
④エレベータ,エスカレータ,空調機器
⑤シリコーン他ケミカル素材,無機素材,成形加工品
U R L https://www.hikari-ax.co.jp

三位一体で生み出すシナジー効果で、お客様のプロダクト開発を多面的にサポート

電子デバイス部門
国内外トップレベルの半導体・電子部品を取り扱い、技術やアプリケーションに精通した技術部員により、お客様へトータルなソリューションを提供しています。
◉半導体
◉電子部品
◉コンポーネント
◉開発ソリューション
◉EMSなど

マテリアル部門
シリコーンをはじめとした高機能樹脂材料とその応用製品(特殊塗料・洗浄剤・接着剤
等)を取扱い、成形加工等のご要望にお応えします。
◉シリコーン系
◉フッ素系/エポキシ系/ウレタン系
◉成形加工品
◉マテリアル・デザインソリューション
◉マテリアル研究開発室

社会インフラ部門
重電機器・FA機器など各種産業施設の制御システムや省エネ機器のスペシャリスト部門。そして最適なソリューションでお客様の高度な要求にお応えしています。
◉IT関連機器
◉システムソリューション
◉画像システム
◉産業機器
◉電気計装制御システム
◉ビルシステム
 
Products & Services
商社の枠を飛び越えて独自の躍進を遂げる

今や世界情勢まで左右するといわれる半導体は、戦略物資として注目を集めている。日本でも半導体不足が問題になる中、存在感を高めているのが株式会社光アルファクスだ。
 同社には、電子デバイス部門、社会インフラ部門、マテリアル部門があり、産業界のニーズに幅広く対応できる技術商社として、活躍の場を広げている。

 「我が社の主軸は電子デバイス部門です。国際競争の要になる半導体を取り扱い、コロナ禍の3年間もお客様への供給を途絶えさせませんでした。こうした供給力に加え、専門技術者による提案力も電子デバイス部門の強みです。営業とともにFAE ※が現場に向かい、製品開発段階からお客様の声を聞いて徹底的に寄り添い、高度な専門知識を要するご提案をしています」。
 需給バランスが崩れ混乱する市場のなかで、光アルファクスは顧客との話し合いを重ね、納期や数量で要求を満足させられるよう、受注体制を見直した。サプライチェーンの一翼を担う商社として、顧客にもれなく商品がいきわたるように検討した結果だ。また電子デバイス部門では、最先端の半導体製品やモジュール製品も提案している。顧客の要望に合わせたセミ・カスタムメイド品のIC開発や、マイコンソフトの開発からボード・ビジネスの開発支援まで、一連のソリューションビジネスを展開し、新製品のベストパートナーとして信頼されている。

 社会インフラ部門は「社会貢献」をテーマに「環境」「安全」「革新」をキーワードとして、市場環境の変化を先取りしたソリューションビジネスを展開し、電気計装制御システムやビルシステム・IT関連機器といった分野において、さまざまなベンダの中から最適な製品・技術を組み合わせて提案している。「社会インフラ部門ではオリジナル製品の開発に取り組み、ファブレスメーカーへの動きも加速させています。ビジョンセンサーの画像システム『SimPrun 』や、太陽光パネルを必要としない屋外用電源ボックス『ALPHIoT POWER 』の開発・販売を進めています」。

 マテリアル部門では、産業用途から建材・塗料・化粧品など幅広い市場に対し、シリコーンを中心としたケミカル材料を提案・販売している。2020 年には、商社としては珍しい「マテリアル研究開発室」を設置した。お客様のご要望に応じたカスタマイズや、海外メーカー製品の機能チェック・レシピ作成などを行っている。

 光アルファクスの3つの部門は、事業分野が異なり取扱製品も広範囲にわたっている。「3部門はそれぞれ独立しながら、横断的に技術の共有や連携も行っています。たとえば電子デバイスの熱対策に用いる放熱技術では、電子デバイス部門とマテリアル部門で協働して付加価値の高いサービスを進めているところです」。

 今後3部門が生みだすシナジー効果は、新たなニーズを発掘し、オリジナル製品の開発など従来の商社の枠を飛び越え、さらなる飛躍の原動力となることが期待されている。
※FAE:フィールドアプリケーションエンジニアの略。専門的な技術力を備えた技術営業職を指す。製品の専門技術に関する説明や、顧客との技術的な打ち合わせを担う。

ファブレスメーカーとして開発したオリジナル製品
■SimPrun(シンプルン)
株式会社 光アルファクス株式会社 光アルファクス
㈱マイクロ・テクニカと共同開発した製造現場向けのスマートカメラ。画像解析する機能を搭載し、瞬時に形状や動作を判断する。オリジナルブランドとして展開され、どのような端末でも動作可能。カスタマイズも容易で組み込み用途に適している。

■ALPHIoT POWER(アルフィオ・パワー)
株式会社 光アルファクス
太陽光パネル方式の問題点を解決した屋外用電源ボックス。使い切りの一次電池で、消費電力によっては10年以上使用可能。積雪監視、地滑り検知、下水・トンネル・道路・橋梁などを監視する、環境配慮型の屋外IoT機器用電源としてリリース。天気や環境の変化に強いのが特徴。

History
技術商社として時代の先を見据えいち早く半導体を取り扱った

 戦後の混乱から少しずつ復興に向かい始めた1948 年、神戸の地で光アルファクスの前身「光電業合名会社」が創業した。暗くなった戦後の街を明るくしたい。そんな想いで、街を彩るネオンの取り扱いから始めた。2 年後には重電機器の取り扱いをスタートさせ、そこから技術商社としての歴史が始まる。

 「創業からまもなく、東芝や沖電気など産業用の機器を取り扱う電気メーカーとの取引を始めました。民生用ではなく、インバーターやモーターなど産業用機器に特化した商社の形はこの頃に作られました。当時は社会インフラ事業をメインに手掛け、半導体の前身となる真空管の販売もスタート、本格的に半導体を扱い始めたのは1961年からです」。
 オイルショック以降、重厚長大から軽薄短小への流れを見て取った2代目社長が、事業の軸足を半導体に移すと決断し、デバイス営業部を拡大させた。1982 年には九州の顧客との電話回線を使用したダイレクト購買システムを開始し、現在の電子商取引にもいち早く対応している。

 「1984 年には現デバイス技術部の元になるSE(システム・エンジニア)制度をスタートさせ、それがさらなる飛躍へとつながりました。その後も順調に売上を伸ばし、1988年には現在の社名へ変更。90年代後半からお客様の生産拠点が海外へ移る傾向が強まったことを受けて、2002 年には初の海外拠点を香港に構えました」。

 2013 年には東芝系ディーラーの㈱ハイメック電子と合併し、そこからマテリアルの取り扱いが開始された。ハイメック電子が、シリコーンと呼ばれるマテリアル製品を取り扱っていたためだ。そこから現在の3部門体制が整い、3部門が生み出すシナジー効果で、付加価値の高いサービスを提供している。2018年に川井氏が代表取締役社長に就任し、2020 年10月、商社では珍しい「マテリアル研究開発室」を立ち上げた。

 「マテリアルは機器とちがって代替がききません。多様な混ぜ物で作るためレシピが非常に重要になる。こうしたレシピを作るため、専門の研究開発部隊が必要でした。デバイス部隊と協業し、未来の製品の研究・開発を進めています」。

 10年先を見据えたマテリアル研究開発室の挑戦は、新しい技術商社のあり方を創りだすに違いない。

株式会社 光アルファクス
マテリアル研究開発室では、取り扱う各種ケミカル素材を組み合わせて付加価値を提供する。顧客が要望するレシピを作成したり、海外製品の品質チェックも実施。2023年からは第二次投資を行い、今の開発室を倍の広さに増床。さらに設備も充実させ、新たな製品開発につなげる。

Management
コロナ禍で電子化を進め新時代の働き方を実現

川井社長が就任した2年後に未曽有の感染症が拡大し、全社員がリモートワークで業務を進める日々が続いた。この時期を活用して、川井社長の主導で取り組んだことがある。社員が1人1冊所持できる手帳型の経営計画書だ。会議など対面で周知しなくても、全社員が同じ方向に進む道標となるツールを実現させた(下記COLUMN参照)。

 「リモートワークで電子書類のやり取りが増えたことを機に、ペーパーレス化も進めました。それまでは資料を印刷しファイリングして、キャビネットに収納していましたが、それらをすべて電子化したんです。サーバーで電子ファイルを共有し、どの場所でも閲覧できる体制を整えました」。 2022年春には事務所内の全キャビネットを撤廃し、生まれた広いスペースを活用してWEBミーティング用のスペースを増築した。それと同時に、社員満足度向上を目的とした事務所のレイアウト変更も行った。

 「4つしかなかった会議室を12まで増やしました。さらに隣のビルが目の前に見える場所にあった会議室を、見晴らしの良い場所に移動させ、社員が気持ちよく会議できる環境を整えました。2023年度からは週1回のリモートワークをスタートさせます。試行錯誤しながらですが、新しい働き方にも挑戦していく予定です」。

 光アルファクスでは社員のリスキリングにも力を入れている。商社マンに必須の会計知識を高められるようにと、ビジネス会計検定の資格取得を推進する。

 「手帳型の経営計画書にはBSやPLの内容も記載していますが、理解していない社員が思いのほか多いことがわかりました。キャッシュフローが見えないと、お客様と仕事の未来は語れません。そこで経理部長に試験対策講座を開いてもらい、資格取得を促しています」。

 コロナ禍を機に、新しい働き方や取り組みを積極的に進める光アルファクスは、新時代を生き抜く準備を着々と進めている。

C O L U M N
手帳型の経営計画書が社員の一体感を創り出す

先行き不透明な時代だからこそ、光アルファクスが進む方向を社員一人ひとりに浸透させたい。そんな想いから川井社長が考えた「手帳型の経営計画書」は2021年度に発行され、2023年度で3冊目となった。初年度は経営計画書の内容について理解を深めてもらうため、川井社長は全国の拠点を行脚して全社員と対話会を設けた。対話会では経営計画書の説明にとどまらず、「質問はない?」「何かリクエストはある?」などの丁寧なやり取りを社員一人ひとりと重ねていった。

 社員紹介のページでは実際の写真ではなくアバターを採用し、社員の個人情報保護にも配慮するなど時代にあわせたアイデアも積極的に取り入れている。プロのアバター制作者に依頼して、社員全員のアバターを作ってもらった。

 社員がなかなか知る機会のない、社章の意味なども掲載した。何のために光アルファクスが存在しているのか。企業としての存在意義も伝えながら、経営理念が社員に浸透するようにと考えられている。

 経営計画書という名前のとおり、中期経営計画の内容も数字を用いて掲載する。それを達成するための施策もすべて公開し、1年毎に進むべき方向性を全社員が把握できる仕立てだ。

 「この経営計画書の中には、私の想いがすべて入っています」と川井社長は語る。社員全員が集う機会が減る今の時代に、この手帳型の経営計画書は、社員の一体感を醸成する無くてはならないツールになるだろう。


キャビネットを撤廃して広々としたオフィスへ。ペーパーレス化でファイルや書類が激減し、社員が帰宅するときにはデスク上に紙1枚残らない。
株式会社 光アルファクス

コロナ禍で延期されていた展示会が各地で再開、「SimPrun」や「ALPHIoT POWER」など独自製品の販売促進にも力を入れている。
株式会社 光アルファクス

Future
ありたい未来像を描き逆算して戦略を立てる

 日本が超高齢社会に突入する2030年、労働人口は不足し、脱炭素化やAI化が進むことで産業構造も大きく変わるとされている。この変化に向け、光アルファクスは「会社としてありたい未来像」を描く。
 「ありたい姿から現在にさかのぼり、バックキャスティングで戦略を立てています。我が社もそうですが、多くの企業が足元をベースに計画を立てるのが通例でしょう。しかしその手法では、2030年の変化に対応できないと私は考えています」。
 新時代に向けDX戦略も進めている。コロナ禍で客先を訪問できず、専門知識を伝えきれない状況を打開しようと始めた会員制サイト「光の知恵袋」もその1つだ( 下記MEMBERS SITE 参照)。会員向けに、若手技術者を対象とした半導体講座も実施する。
 「人手不足から少人数制で業務を進めざるを得ないお客様が増え、若手の育成が難しくなっています。そうしたお客様に向けて、我が社の技術者が半導体の初級講座を開き、ご好評をいただいています」。
 監視カメラデータを通信するSIMカードのサブスクビジネスもDX 戦略の1つで、こうした商材やサービスを今後は積極的に増やしていく方針だ。
 「エンジニアリング企業として、社会に高付加価値製品を提供したいと考えています。マテリアル研究開発室をさらに充実させてオリジナルブランドを社会に浸透させ、企業価値を向上させたい。そうして外部環境に左右されない安定事業を継続し、全社員が幸せを実感できる環境を整えて、ESG経営で社会にも貢献できる会社を目指します」。
 ありたい未来像に向かって光アルファクスは挑みつづけている。不確実性の高い今の時代を生き抜くヒントがそこに隠されているかもしれない。

M E M B E R S S I T E
DX戦略で顧客との接点を創造する取引先向けの会員制情報サイト

 コロナ禍で対面での営業活動が制約を受ける中でも、顧客との接点を維持できないか。その打開策として考えられたのが、2021年10月に立ち上げた会員専用サイト「光の知恵袋」だ。光アルファクスの新製品情報や、顧客が開発するプロダクトに適した製品ノウハウなどを、WEBで提供できるようにした。会費は無料。顧客の関心ごとである半導体の需給動向もタイムリーに公開している。
 今までは営業を介して顧客が行っていたマテリアルの在庫確認もWEBで行えるようにした。さらに、光アルファクスのFAEが技術的な専門知識を詳細に公開している。製品仕様や回路図など、技術職のキャリアを積んだ専門家でないと書けない内容も積極的に共有し、展示会やセミナーが開けないコロナ禍でも、「光の知恵袋」がその代役を果たした。

株式会社 光アルファクス
「光の知恵袋」では技術の話題だけでなく、ブレイクタイムを楽しめる雑学的なページも人気だ。歴史好きの社員が書くコラムは、それを読むためだけにサイト登録をする会員がでるほどで、読み物としての質の高さも好評を得ている。

株式会社 光アルファクス
<光の知恵袋の特徴>
●顧客の開発製品にあう解決策が見つかる
●製品の市場動向や需給情報がわかる
●希望する製品や開発の検証が可能
●リアルタイムな新製品情報を知れる
●ブレイクタイムにぴったりの話題が楽しめる



同じカテゴリー(企業紹介)の記事
株式会社アデリー
株式会社アデリー(2022-08-22 09:33)

ケニス株式会社
ケニス株式会社(2022-06-30 18:17)

Posted by マガジン at 16:57 │企業紹介