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植田アルマイト工業株式会社

アルマイト専業メーカーとしてアルミニウムの用途開発、需要拡大に貢献している植田アルマイト工業株式会社。
業界最大手の処理能力とともに、豊富な製品バリエーション、品質の高さは顧客から高く評価されている。
専業メーカーとしての道を究め、創業70 周年を迎える同社の経営戦略を植田信夫社長にうかがった。


アルマイト専業メーカーの道を究め
新技術の開発と
新分野の開拓に邁進する


植田アルマイト工業株式会社
植田アルマイト工業株式会社
代表取締役社長
植田 信夫 氏

所在地  大阪府堺市東区石原町1-103
       TEL 072-259-2225(代)
創業    1948年6月
設立   1950年1月
従業員数 200名
資本金   7,200万円
年商    32億円(’18/3月期)
事業内容 アルミニウム表面処理(アルマイト加工)
U R L   http://www.uedaalmite.co.jp


植田アルマイト工業株式会社
本社

Products 

国内随一を誇る
豊富なカラーバリエーション



 「『アルミニウムの三角定規を使うと製図用紙が汚れるので酸化被膜をつけてほしい』と依頼された理研の研究者の不注意が、新素材『アルマイト』を生み出した。1924 年のことである」(『理研ニュース』2005 年5月号)。
 アルミニウムとそれを主体とする合金(以下、アルミ)の腐食を防ぐために欠かせないアルマイト(陽極酸化皮膜)は、上記のエピソードのように日本で生まれた表面処理技術である。植田アルマイト工業株式会社は、創業以来70 年にわたってアルミの表面処理一筋に事業を展開し、現在ではアルマイト専業メーカーとして業界最大手となっている。その強みは「技術力と品質の高さ、そして処理能力です」と、植田信夫社長は言う。
  同社のアルマイト加工には、主に意匠性(装飾性)、耐候性を目的にした「普通アルマイト」と、高硬度、潤滑性、静電気対策、抗菌などを目的にした「硬質アルマイト」がある。
 「普通アルマイト」は、加工する素材の形状によって、押出形材に対するアルマイト処理( 以下、「形材」)と、板材に対するアルマイト処理(以下、「板材」)に分かれ、現在同社では、「形材」、「板材」、「硬質アルマイト」を事業の3本柱としている。
 「形材」の用途はサッシなど建材関係が50%弱で、残りは車両関係、LED照明関係、一般産業機械向けなど非建材が占める。「20年前は、建材が80%を占めていましたが、アルミの用途が拡大し、非建材が50%以上を占めるようになりました」。「板材」の用途は現在も建材向けが主だが、近年は半導体向けが急増している。
 「硬質アルマイト」は、扱う材料がアルミダイカスト、アルミ鋳物、アルミ鍛造品、押出形材など多岐にわたる。用途も自動車関連の重要保安部品、半導体・液晶製造装置、食品製造機械、医療検査機器、空圧機器、紡績機械関係など多種多様だ。
 強みの技術力は、国内随一である豊富なカラーバリエーションに象徴される。
特に、ホワイト色については純白からアイボリー色の4 色を保有し、用途では冷凍車、LED照明、バスルーム、キッチン、トラックのリアドア材、建材などに採用される。グレー色などその他の色はハウスメーカー向け、ビル物件などに採用されており、マット仕上げによりダイス目(表面の押出し方向に現れる線状の細かな凹凸)を除去した後、ステン色、ブロンズ色、ブラック色、グレー色などを組み合わせることにより30色以上のカラーが可能だ。他の専業メーカーでは10 色あるかないかだという。植田社長は「いろいろなカラーに対応できるのは、専業としての価値」だと考えている。そのため、アルマイト加工を内製している大手建材メーカーからの発注も多い。
 品質の高さも、専業メーカーとして生き残るために欠かせない要素だ。一例をあげると、自動車重要保安部品の硬質アルマイト加工を扱うようになって20年以上になるが「品質的なクレームは1度もない」という。
 処理能力は、堺市の本社工場と三重工場を合わせて「形材」で2 , 500t、「板材」で18万㎡。「硬質アルマイト」は本社大型硬質工場、堺硬質工場、三重硬質工場を合わせて1万㎡を超える。いずれも業界随一を誇り、現況はすべてがフル稼働状態だ。


H i s t o r y 

創業40年、50年の節目ごとに
思い切った設備投資で
顧客ニーズに応える



 1948 年、戦前にアルミメーカーに勤めていた植田健太郎氏が復員し、弟で後に2代目社長となる重三郎氏などと共に大阪市内でアルマイト工場を立ち上げたのが、同社の創業となる。2 年後には植田アルマイト工業株式会社を創立するなど、日用品を中心にしたアルミ製品の普及とともに事業は順調に拡大していった。
 最初の転機となったのは、高度成長期の1967年、本社工場を堺市へ移転し、押出形材のアルマイト加工を開始したことだった。1972 年には、アルマイト専業メーカーとしては日本で初めて「陽極酸化被膜JIS表示認定工場」を取得し、業界での地歩を築いた。1981 年に大阪中小企業投資育成の出資を受けて設備の増強にさらに注力し、創業40周年の1988年に縦吊りラインの新設と最新鋭のカラー整流器を導入した。
 「長尺の材料が多い押出形材は、横吊りラインが主流でした。縦吊りは設備投資の負担は大きいですが、生産性が大幅にアップでき、液切れが良いことから品質向上につながります」。縦吊りラインとバラつきのないカラーを実現する設備の導入で、同社への発注はさらに増加することになった。
 創業50周年の1998年には三重工場を新設した。これは「中部地域のお客様への利便性の向上という目的のほか、阪神淡路大震災を教訓に、2工場体制でリスクを分散させたい」という狙いもあった。三重工場は「形材」縦吊りラインでスタートし、同地域の自動車部品関連のニーズに応えるため、2005 年には「硬質アルマイト」専用工場も設けた。
 顧客ニーズに応えるために思い切った設備投資を行い、新規技術の開発と技術の研鑽を積み重ねる。同社は、脇目も振らずアルマイト専業に誠実に取り組むことで、顧客の信頼を勝ち取り、業容を拡大してきた。
そのDNAは、2011 年に3 代目社長に就任した植田社長にも受け継がれていく。


Management

誠実な行動を実践し
環境づくりにも
積極的に取り組む

 
 就任した植田社長が、最初に取り組んだのが、経営理念の策定だった。
 「当社が創業から大切にしてきたものは、誠実に行動すること。誠実な行動でお客様との信頼関係を構築してきたことが、事業拡大の原点です。それを従業員のみなさんに分かりやすい言葉でどう伝えるかを考えて、経営理念と行動指針10か条をまとめました」。
 社長が自ら考えた理念と行動指針は『信頼への道』と題して、名刺サイズのカードに記して従業員に配布し、朝礼で唱和している。
 大型投資では、2014年に生産能力を従来の1.5倍に拡張した「板材」ラインの新工場を本社に建設し、2017年には、本社新社屋を建設した。これらの投資は、生産力の拡大だけでなく、作業環境の改善整備、働きやすい職場環境づくりも主要な目的になっている。「板材」ラインの新工場には工場見学専用通路を設け、アルマイト工場のイメージを一新した(COLUMN参照)。
 大型投資以外にも、年間予算約2億円で工場別での冷凍機や整流器など装置類の更新に取り組んでいる。これも「故障してラインが止まり、お客様に迷惑をおかけするよりも、故障する前の対処が大事」という植田社長の考えから計画的に実施している。
 また、同社では職場環境の向上のため、終業時間15分前に男女、管理職関係なく社屋の掃除を実施している。植田社長自らも社長室の掃除を行うことで、働きやすい作業環境、職場環境づくりを全社員が主体的に推進していく意識を高めている。


F u t u r e 

今後もアルマイト専業で
会社をさらに発展させていく



 アルマイト業界全体で見ると、生産の海外移転や少子高齢化による住宅の減少などで、市場は停滞気味にある。アルマイト加工の同業者には、切断や穴あけなどの二次加工を行うところも多いが、同社はほぼアルミの表面処理のみで事業を展開し、業容を拡大している。
 「今後もアルマイト専業メーカーとしてアルミとマグネシウム合金の需要開拓、新技術開発を推進していきます」。
 同社の営業は、アルミ材料のメーカーだけに留まらず、機械メーカーや部品メーカーに対して、アルミ材料の用途拡大を提案していく。多様なニーズに対応できるアルマイト技術があるからこそできる専業メーカーならではの営業だ。マグネシウム合金の表面処理は、以前にはカメラの筐体や釣具のリールなどに展開されて注目されたが、現在は需要が伸び悩んでいる。しかし、将来的には自動車のEV化などにより、アルミよりさらに軽量化が必要な製品に需要の可能性が大きいと考えて、その技術も研鑽している。
 今後も発展していくための人材の確保と育成では、地元だけでなく地方の高校、高等専門学校、大学への訪問や、インターンシップの活用、大阪府プロフェッショナル人材戦略拠点運営事業の活用のほか、女性の活用を積極的に進めている。
 「女性の活用が話題になる前から、事務職の女性が真面目にコツコツと仕事に取り組むのを見ていて、その活用をずっと考えていました。デリバリーなどを担当する営業管理職から女性の担当を増やし、昨年、今年と各1名ずつ大卒女子の営業職を採用しました。新しくきれいな社屋が、彼女たちが入社を決めた大きな理由になったようです。社員がここで働いて良かったと思ってもらえるような企業に発展させていきます」。
 植田アルマイト工業株式会社は、これからも「アルマイトのことならどこにも負けない」専業メーカーとして、日本の、世界の産業に貢献していく。


C O L U M N

工場見学通路の設置で、アルマイトのイメージアップに貢献

 植田アルマイト工業株式会社では、2014年に建設した「板材」ラインの新工場に工場見学専用の通路を設けた。また、2017年に完成した本社新社屋には高級な鍋やアイロン、剣道の面など特色あるアルマイト加工の商品を紹介する展示ブースを設置した。
 「アルマイト工場は、処理工程の中で苛性ソーダ、硫酸などの薬品を使用しているため、工場見学する際はどうしてもそれらの匂いがしたり、ミストによりむせたりなど、決して環境に良いとは言えませんでした。そこで、お客様にそのような不快な思いをさせず、安心して工場見学をしていただきたいと思って、ガラス張りの見学通路を設けました。展示ブースは、当社が処理したアルマイト製品がどのようなところに使われているのかを認知していただくことにより、当社のブランド力を上げる狙いと、新規開拓につながればという思いで設けました。また、社内的にも社員のモチベーションを上げる狙いもありました」。
 業界で初めてという試みは、顧客や業界関係者の話題となり、工場見学者は大幅に増加した。さらに、堺市内の企業関係者や、地元の子供たちの工場見学もある。
 「お客様も当社との取引では直接関係がない総務などの部署から、アルマイトに興味を持たれ工場見学に来られるケースも多くなってきました」。
 見学者から「アルマイト工場がこんなにきれいだとは思わなかった」と驚きの声をいただくことも多いという。「従来のアルマイト工場のイメージを払しょくしたい」と言う植田社長の思いは多くの人に届き、社員のモチベーションアップにもつながっている。

植田アルマイト工業株式会社

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理念と行動指針をまとめたカード。
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本社・工場
全社体制でお客様のご要望に応えるために、品質の安定性と生産性アップをめざした営業・生産管理体制システムで対応しています。

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Posted by マガジン at 10:05 │企業紹介