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ターナー色彩株式会社

ターナー色彩株式会社は、第一線で活躍するアーティストから学生まで、圧倒的な支持を集める絵具をはじめ、伝統ある社寺仏閣やモダンな商業施設を彩る塗料の開発や施工、さらには近年ブームのペイントDIYやホスピタルアートなど、多彩な事業を展開している。
デジタル化による市場縮小を乗り越え、成長を実現されている経営について地平宏会長と松村隆社長にうかがった。

色の可能性を追求し
   市場創造に挑戦する
 色彩の総合メーカー


ターナー色彩株式会社
ターナー色彩株式会社
代表取締役会長
地平 宏 氏

ターナー色彩株式会社
ターナー色彩株式会社
代表取締役社長
松村 隆 氏

所在地  大阪市淀川区三津屋北2-15-7
       TEL 06-6308-1212(代)
創業    1946年11月
従業員数 80名
資本金   7,500万円
年商    23億円(’18/12期) 
事業内容 絵具・塗料の製造販売、塗装施工など
U R L   https://www.turner.co.jp


ターナー色彩株式会社
本社


Products

強い商品力を持つ絵具と塗料、
その間にある
ブルーオーシャンも開拓


 「ターナー色彩株式会社」という社名はご存じなくても、同社の商品で絵を描いた人は多いだろうし、描かれた絵は必ず目にしているはずだ。ポスターカラーやアクリルガッシュは、多くの中学・高校で学校教材に採用されている。かつて映画館に掲げられていた上演の看板は、ほとんどがターナーのネオカラーで描かれていた。現在も、ディスプレイやPOP広告、舞台装飾、屋外看板などで広く使われている。
 「中学・高校から美大・芸大とずっとターナーの絵具を使ってくださった皆さんが、学校の先生となって教材を選ぶ際に、ターナーを指定してくださる。非常にありがたいことに、そうしたブランドサイクルが回っています」( 松村隆社長)。
 こうしたサイクルが回る背景には、アーティストやプロからも評価される発色の素晴らしさなど強い商品力と、多彩なラインナップがある。それに加えて、絵具の製造技術を応用した塗料を早くから開発し、販売先として絵具の画材店ルートのほか塗料のホームセンタールートを有していることも同社の強みだ。特に、2014 年に発売した「ミルクペイント」はDIYを安全に気軽に楽しむために原料にこだわった屋内向け塗料で、森永乳業のミルク原料を使用し、パッケージも乳牛をデザインすることでイメージと機能が直感で結びつくように工夫されている。同社では、このミルクペイントで「ペイントDIY 」という女性を中心にした、まったく新しい市場を創り出すことに成功した。松村社長は「当社は、早くから絵具と塗料の間にある商品を開発し、ペイントDIYなど新しい市場を開拓してきました。この分野はいわゆるブルーオーシャンで、他社がなかなか追随できない市場です」と、塗料分野でのターナーの強みを説明する。
 地平宏会長は「商品力に加えて、時代の変化に臨機応変に対応できる商品開発力があった。その原点は、『我々の製品は常に最良であらねばならない』という創業者の社是です」と、会社としての強みを説明する。「『最良』というのは品質が良いだけでなく、消費者に認められるものであること。『我々』は社員が一致団結して、『常に』は未来永劫、『あらねばならない』はその覚悟を意味します」。この社是は社内各所に掲げられている。


ターナー色彩株式会社

H i s t o r y

デ ジタル化への危機感をばねに
新商品開発と新分野開拓に
発破をかける


 1946 年に塗料の販売会社として丸大産業株式会社を設立したのが同社の創業で、翌年、社名をターナー色彩化学工業株式会社に改称し、水彩絵具と手芸用絵具を発売した。社名は、創業者・松村健一氏が英国のロマン派の巨匠ウィリアム・ターナーのファンだったことから名付けられたという。1948 年に発売したポスターカラーは多彩な用途とすぐれた発色性で市場を席巻し、同社が飛躍する最初のきっかけとなった。
 1956 年には短期屋外用絵具ネオカラーを発売し、当時全盛期を迎えていた映画館の看板などで圧倒的な支持を集めた。以後、デザイナーなどのプロから学生まで幅広く使われるポスターカラーと、看板など屋外用絵具として高いシェア占めるネオカラーの2 商品のシリーズで「売上の80 ~ 90%を占める」時代が長く続く。1982 年には現在の主力商品である超微粒子顔料を採用した不透明アクリル絵具のアクリルガッシュを発売した。
 総合絵具メーカーとして順風満帆だった1987 年、強いリーダーシップで会社を牽引してきた創業者(当時は会長)が他界した。1991 年、後を継いでいた松村京子社長に請われて地平現会長が入社した。地平会長は創業者の甥に当たり、前職は大手商社で繊維ビジネスに携わっていた。入社当時、ターナーは事業が順調で財務も非常に健全な優良会社だったが、ターナーの主要市場であるデザイン業界ではCG(コンピュータグラフィックス)の導入が始まっており、地平会長はその将来に大きな危機感を抱いたという。
 「デジタル化は構造的な外部要因で、業務用に使われている絵具はCGに取って代わられることが見えていました。さらに、少子化も進む。構造的な不況で苦境に陥った繊維関連の企業を多く見ていたので、ターナーもこのままでは大変なことになる。そう感じていました」。
 しかし、実際にはまだ売上が落ちているわけではなく、社内にはバブルの余韻が残っていた。そのなかで社員に危機感を伝えることは難しく、自発的に新しいことにチャレンジする風土をつくることは困難だった。
 地平会長は「新商品・新分野・新規客先を常に開拓する」と言い続け、商品開発に発破をかけた。1993 年に社寺仏閣彩色システムを発表して塗装施工分野に進出するとともに、テント用水性ペイント、工作用絵具、トールペイント&ステンシル用絵具など毎年2、3種類の新商品を出し、ホビー分野の商品などを充実させていった。
 それでもデジタル化による既存商品の落ち込みが大きく、しばらくは売上の減少が続いた。ただ、この時期に新しいことにチャレンジする風土が社内に醸成され、新商品開発の知識とノウハウが蓄積されて研究開発力が飛躍的に上がった。これらは大きな財産となり、業績回復の原動力となる。
 売上が再び右肩上がりの傾向が鮮明になった2012 年には、研究開発という新たな観点から、「夢」チャレンジ精神と、「未来」次世代への大望を感じさせる企業として評価され、大阪ものづくり優良企業賞 「夢・未来・TRI賞」を受賞した。そして、2014 年に発売したミルクペイントが新たな市場を創造するヒット商品となった。


ターナー色彩株式会社

ターナー色彩株式会社

Management

空中戦と地上戦で
新市場を創造する


 いくら商品力が優れていても、成熟化した市場ではそれだけではヒットは難しい。まして、新しい市場を創造するには何らかの仕掛けが必要だ。松村社長はそれを「空中戦と地上戦」と表現する。
 「空中戦はSNSのインフルエンサー(世間に与える影響力が大きい人物)を活用したマーケティングです。例えばカリスマ主婦と呼ばれるような人気のブロガーの方々に、ミルクペイントをブログなどで紹介してもらっています。一方、地上戦はホームセンターの店頭やホビーショー、DIYショーなどの展示会でワークショップを開催して、消費者の方に直接体験してもらう地道な活動です。
ワークショップは年間100回以上開催しています。その空中戦と地上戦の両方で、ミルクペイントによるペイントDIYという新しい市場が広がっていきました」。
 こうした活動は企画室が中心になっているが、地平会長の呼びかけで結成した女性社員による「なでしこチーム」も大きな貢献を果たしている(COLUMN参照)。
 また、新商品開発の要になっている研究開発室は、40歳代の部長を筆頭に、化学分野のバックグラウンドを有している20歳代30歳代の若手が中心となって活躍している。ミルクペイントも若手技術者が開発した。1990年代に地平会長とともに新製品開発に奮闘してきたベテラン社員もその豊富なノウハウを活かし顧問として若手の研究開発を支えている。若い社員の新鮮な発想にベテランの知識・ノウハウを混ぜ合わせることで、社是の実践につなげている。

ターナー色彩株式会社

ターナー色彩株式会社

F u t u r e

色彩の力で社会に貢献する
企業を目指す


 創業から72年目の2018年に社長に就任した松村社長は、「100周年に向けて持続的に成長させていくのが、私の使命。そのためには、会長が推進してきた新市場、新規事業の開拓を一層推進させ、関東市場と海外の売上拡大を目指していきます」と抱負を語る。地平会長の子息である松村社長は大手化学メーカーを経て、10年前にターナーに入社し、東京支店で同社の課題である関東市場の売上拡大に奮闘してきた。社長就任後も東京支店長を兼務し、引き続いて売上の拡大に取り組んでいる。
 海外は1996年に世界一のアクリル絵具メーカーである米国ゴールデン社と提携したことを契機に、グローバル市場への意識を高めてきた。当初は輸入が中心だったが、海外にはない優れた新商品で徐々に輸出を拡大している。
今後は本格的に海外市場の拡大に取り組んでいく。
 「ターナーのコアコンピタンスは『色彩』だと思っています。絵具や塗料を製造販売する『モノ』だけではなく、色彩を軸にした『コト』『サービス』を展開する色彩の総合メーカーを目指します」(松村社長)。
 その代表的な取り組みが、病院や福祉施設などを対象にアートで心が癒される空間をプロデュースする「ホスピタルアート」や、公衆トイレに絵を描きアートトイレにする東京都豊島区でのプロジェクトだ。
 地平会長は「色彩には、環境を美化したり、人々の心を癒す力があります。
その色彩の力を活用して新市場を創造し、色彩を通じて社会に貢献できる企業にしてもらいたい」と、新社長に期待をかける。

ターナー色彩株式会社



C O L U M N

女性社員による「なでしこチーム」が
新商品の販売促進やブランディングに大活躍!


 「ペイントDIYのユーザーはほとんどが女性。ミルクペイントを上市してDIY市場を開拓する時に、ブログで商品の情報を発信してもらうために女性社員よる『なでしこチーム』を結成しました」(地平会長)。
 企画のほか総務や製造、技術などから集まった「なでしこチーム」は、普段は各部署で業務をこなし、定期的に集まって企画を練ってブログで発信している。発信内容はミルクペイントをはじめとした自社商品を使った作品づくりやイベントの告知・報告など。時にはテーブルとベンチづくりなど本格的なDIYにもチャレンジしている。女性ならではの視点による作品とやさしい語り口調が共感を呼び、多くのフォロワーを獲得している。

ターナー色彩株式会社

ターナー色彩株式会社

 「土・日曜日に開催されることが多いワークショップにも積極的に出てくれて、とても助かっています」と松村社長が言うように、「なでしこチーム」の活動はブログだけに留まらない。今や、商品の販売促進に欠かせない存在となっている。
 さらに、その活動は雑誌やテレビのメディアにも取り上げられ、会社のブランディングにも大きな貢献を果たしている。

ターナー色彩株式会社
ターナー色彩「なでしこチーム」のブログは
https://ameblo.jp/turnernadeshiko/


ターナー色彩株式会社

ターナー色彩株式会社
絵具・塗料メーカーとして培った技術力を活かし、商業施設や公共施設、社寺仏閣などの付加価値の高い塗装施工や、ホスピタルアートなどアートを通じた癒しの環境づくりも展開している。


ターナー色彩株式会社

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絵具業界では最も早く1999 年にISO 9001を取得。品質保証、品質管理体制が確立した製造工場。

ターナー色彩株式会社

色彩を数値化することで繊細な色差を調整し、生産時期やロットによって色が変化しない製造ノウハウを持つ。



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Posted by マガジン at 09:39 │企業紹介