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コロナ禍における「攻める営業」とは| 株式会社不動産中央情報センター

1974年に、当時閉鎖的だったとされる不動産業界に風穴をあけるように創業した株式会社不動産中央情報センター。業界内で先駆けて、物件の仲介から管理までを一体的に請け負う「賃貸管理業務」を手がけ、さらに独自に培った管理業務のノウハウを他社にも提供し、業界全体の質的向上を目指してきた。「不動産業から、くらしサービスへ」を掲げ、オーナーや入居者、そして社内のコミュニケーションを大切に、事業を展開してきた濱村美和社長は、このコロナ禍でも先を見据えて、オンラインによる新たなサービスや仕組みづくりに取り組んでいる。

360度VR※映像を活用したオンライン接客で高い成約率を確保

※ VR:Virtual Reality(バーチャルリアリティ)の略。コンピュータによって作られた仮想的な世界をあたかも現実世界のように体感できる技術。

コロナ禍における「攻める営業」とは| 株式会社不動産中央情報センター
代表取締役社長
濱村 美和氏
1972年生まれ。福岡県出身。1997年に株式会社不動産中央情報センター入社。2007年に代表取締役社長に就任、2013年に株式会社デマンド代表取締役会長に就任。

コロナ禍における「攻める営業」とは| 株式会社不動産中央情報センター
本社

会社概要
所在地  福岡県北九州市小倉北区東篠崎1-3-13
     TEL 093-931-1000
設立   1974年7月
従業員数 174名
資本金  1億円
年商   23 億円(’21/ 6 期)
事業内容 賃貸管理、賃貸斡旋
U R L   https://www.demand.co.jp


快適な住環境の提供を目指して3事業を展開

 創業時より掲げてきた「不動産業界の質的向上への貢献」と「地域活性化」という経営テーマのもと、不動産中央情報センターでは大きく3つの事業を展開している。

 傘下のグループ会社と共にメインの「不動産事業」では、物件の仲介や売買ばかりでなく、賃貸物件の入居から退去、リフォーム、空き家管理、クレーム対応など、管理を通じて家主の完全代行業務をいち早く手がけてきた。

 「ネットワークビジネス事業」は、創業者が、当時ネガティブなイメージがあった不動産業界を皆の力で変えたいとの想いから、同社が独自に培ってきた賃貸管理業務のノウハウを、研修事業を通じて全国に積極的に公開、共有を図ってきたのが始まりだ。現在では賃貸管理実務研修事業や、加盟店経営者が互いに学び合う「新経営塾」を運営している。

 「シニアライフ事業」は、高齢化する家主たちに快適な住環境を提供したいとスタートした、住宅型有料老人ホーム「ゆうゆう壱番館」を運営している。

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住宅型有料老人ホーム「ゆうゆう壱番館」。将来的には多世代交流を考え、入居者年齢を引き下げたいと考えている。現在は試験的に地元の地域創生学群の大学生2名がシェアハウスとして入居している。

 これら3つの事業は全て、人を対象とするもので、同社でもこれまで、当たり前に対面式で営業活動や研修事業を行ってきた。賃貸物件の仲介では、現地に同行して物件を案内し、「ゆうゆう壱番館」では入館者参加型の現地見学会などのイベントを通して、入居希望者を募ってきた。

いち早く360度VR映像のオンライン接客の仕組みを整備

 昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、人とのリアルな接触が大きく制限され、対面式の営業活動が全くできなくなったことについて濱村社長は「最初は情報が錯綜していましたし、お客様と社員の安全を守るために、どこまで対策を取ればいいのか、全くの手探り状態でした。ともかく、お客様が店舗にいらっしゃることを敬遠されるだろうと、すぐにオンラインでの対応に取り掛かりました」と語る。

 同社では、2019年に営業サポート部門を立ち上げている。子育てのために時短勤務中の女性たち3人のチームだ。今回のコロナ禍に、この営業サポート部門がいち早くオンライン接客・オンライン内見の仕組みを整備した。360度VR活用ソフトを導入し、部屋の中をぐるりと見渡して内見できるようにしており、実際の運用にあたっては、全店舗の賃貸スタッフを対象にロールプレイングを実施して臨んだ。そして、今年1月から実際に活用を始めて、濱村社長が驚いたのは、オンライン接客になって成約率が上がったことだった。

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従来はリアルな会場で行われていた賃貸管理実務研修もオンラインでの実施となった。オンラインのメリットも大きく、オンラインとリアルのハイブリッド型で実施している。

 「初対面のお客様からすれば、顔も見えない相手からの情報は信頼できないだろうと、当社では顔を見せて案内しています。また、オンラインでは伝えられない音や匂いなど後にトラブルになりそうな内容についてもより丁寧に説明するよう心がけており、そうした細やかなコミュニケーションが成約につながっているのではないかと考えています」。

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360度VR映像を使ってのオンライン接客のデモ画面。部屋の間取り図を使って、どの位置からどの方向を見ているのかをあわせて確認できる。店舗スタッフとはオンラインでつながり、見学者の質問にもその場で答えることができる。

図らずもコロナ禍で加速したデジタル化への転換

 新型コロナウイルスの影響で、昨年は売上が落ちるかと思いきや、実際には第一波の頃に、部屋探しの需要が高まった。先行きの不安から、一律に支給された特別定額給付金を引越し費用に当てて、より家賃の安い物件へ住み替える人たちがいたからだ。

 「以前から、営業成績のよいスタッフは現地に向かう前の店舗でのカウンター接客から違っていました。営業の入り口であるカウンター接客時に、どこまで具体的にヒアリングし、優先順位をつけ、条件を絞りこめているか、が高い成約率に繋がっていました。現地をリアルに案内しないオンライン接客で成約率が上がったことが、図らずもそれを証明しています」。

 一方、シニアライフ事業は、高齢者が対象だけに施設内は厳戒体制で臨んでいる。入居者や近隣の住民を対象に行われていたイベントは全て中止となり、現地体験会についてもオンラインに切り替えた。あわせて、子どもや孫に会えなくなった入居者のオンライン面会もサポートしている。

 自社の成功体験やノウハウを積極的に公開する賃貸管理実務研修事業はオンラインとなって、東京や大阪など遠方からの参加者が増えた。「これからは、不動産業界もデジタル化に対応していかねばならず、今回のコロナ禍は良い機会になったと思います」。

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コロナ禍で困窮している大学生の支援のため、同社の賃貸物件の入居者から希望者を募集し、審査を経て奨学金を給付している。

コロナ禍の努力や工夫が次代の成果につながると信じて

 オンラインについては、社内の会議や研修はもちろん、求人活動や社員旅行にさえも活用してきた同社だが、一方で濱村社長はオンラインの課題も指摘する。「すでに関係ができている間でのやりとりには問題はありませんが、初対面の方への活用や、多人数でのディスカッションではまだ工夫が必要ですね」。

 このコロナ禍という未曾有の状況下で、濱村社長が社員たちに伝え続けてきたのは「今しかできないこと、今だからできることを、今やろう。コロナ禍という非常時に知恵を絞ったことや苦労したことは、私たちの人生にも仕事にも必ず活きてくるから」ということだ。

 今年6月には「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行され、賃貸管理業の社会的認知度が高まり、業界の質的向上がさらに前進すると期待が高まっている。

 コロナ禍で生活様式や価値観が大きく変化するなか、顧客のニーズをしっかりキャッチしようと今期の方針に「お客様を知る」を掲げた濱村社長。
 原点に立ち返って、今後の飛躍につなげる決心だ。

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