特集記事

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社

特集
次代への発展に不可欠な 若手人材の採用・育成・定着を考える

ものづくりの現場で必要とされる機械や設備、工具類など生産材を専門に扱う商社の西川産業株式会社。
創業は1949 年で、ものづくり大国・日本の発展とともに75 年の歴史を刻んできた。
社会環境が大きく変化する中で、昔のような事業の進め方、経営のあり方では企業は存続しないと、
西川正一社長はさまざまな点で大きく経営の舵を切ってきたが、その一つが社員の働きやすさや働きがいの推進だった。
若手社員にも積極的に挑戦できる機会を与え、
やりがいを持たせることで定着率の向上につなげている西川社長にお話を伺った。

ワークライフバランスや働きがいの推進で若手社員の定着へ

西川産業株式会社

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
代表取締役社長
西川 正一 氏
1955年生まれ。大阪府出身。1977年大阪大学経済学部を卒業後、長瀬産業株式会社に入社。 1983年西川産業株式会社に入社。1984年3月新設の子会社マザックニシカワ株式会社に異動し、金属加工マシン販売を担当。2001年西川産業株式会社の代表取締役社長に就任。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
会社概要
所在地   大阪市東淀川区瑞光2-6-21
TEL     06-6990-5250
設立    1951年2月(創業1949年)
従業員数  194名
資本金   1億円
年商    109億円(’23/3期)
事業内容  ロボテックマシン(CNC工作機械)、環境機器、FAシステム機器、
      マテハン機器、メカトロ機器、産業機器、機械要素部品、
      切削・測定・作業工具などの生産財、CAD/CAM、オフィス機器の販売、
      並びにそれに付属する工事サービス
U R L    http://www.nishikawa-nbc.co.jp

若手社員の定着率の低下から働きやすい職場づくりへ

 機械や工具などの生産材の卸売業界は、ものづくり企業の発展とともに長い間、恵まれた市場環境の中にあったと語る西川正一社長。

 「言われたことだけをやっていても生きていけたんです。しかし近年、製造拠点が海外にシフトした上に、事業者向け通信販売会社の台頭でナショナルブランドメーカーの型番商品などはネットで購入される時代になりました。

 そうした中で当社は生き残りをかけて、お得意先のお困りごとを解決する提案型営業や、昨今の人手不足を解決する工作機械の自動化などに注力したほか、2012年には社内にエンジニアリンググループを立ち上げました。機械の納入にともなう工事まで一貫して請け負えるようにし、最近は自前の営繕部門が持てなくなっているお得意先に代わってちょっとした工事や保全、営繕業務などを担っています。お得意先からも大変便利だと好評をいただき、当社の大きな強みになっています」。

 同社では、2015年に「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」に認証されたほか、同年大阪労働局からも「働き方改革宣言企業」として登録されるなど、社員の働きやすさ、働きがいにつながる取り組みも積極的に進めてきた。そのきっかけは若手社員の定着率の低下にあった。

女性の第一線での活躍が企業の継続に重要


 「現在は社員のワークライフバランスを積極的に推進していますが、かつては業界の慣習で社員のサービスによる休日出勤や時間外勤務が当たり前の時代があり、その頃は新入社員の6割が数年以内に離職していました。

 機械工具商の営業というのは、得意先からお困りごとを聞き出す力が重要です。経験を重ね、お得意先に適切な質問をすることで課題やニーズをキャッチでき、ひいては適切な提案につながるわけですから、しばしば担当が変わっているようではお得意先からの信頼が得られません。

 そもそも企業にとって資産とも言える営業担当の商品知識の勉強会も、かつては終業後に行なっていました。私自身の考えでは、商品研修は機械メーカーの開発に詳しい人を講師に招いて就業中のゴールデンタイムに行い、アフターファイブはプライベートの充実に当てるべきです。まずはそこから取り組みました」。

 さらに、女性を戦力にしなければこれからの企業は生き残っていけないと、早くから女性活躍を唱えたのも西川社長だ。

 「長年の男社会を変えるのはとても苦労しましたが、女性たちがフルに能力を発揮できるようルールや仕組みも整えてきました。男性、女性という区別なく、昇進もボーナス審査も同じように評価しています。これをずっと継続してきた結果、女性の営業職も定着し、現
在は9名が活躍しています」。

社員たちの主体性を引き出す仕掛けや仕組みづくり

古い体質だったという一方で、「やってみたいことは挑戦してみろ」という風土は昔からあった。

 「自分で苦労して作成した提案書がお客様の課題解決につながり、大変喜ばれたという体験は営業の醍醐味です。若い社員にそうした経験を積ませるためにアドバイスをしたり、同行訪問したりして応援してきました。早いうちから達成感を得られる仕掛けを作ることも経営者の仕事だと考えています」。

 社員の主体性という点では、ワークライフバランスやダイバーシティの推進もプロジェクトチームを編成し、社員自らが進めている。

 「ISO9001やISO14001の認証取得もそうでしたが、社員たちが主役になって取り組むことで、上からの指示による“やらされ感”もなく大きな学びがあるはずです」。

 こうした取り組みが成果を上げ、若手社員の定着率は格段に向上した。2018年に「学生に教えたい『働きがいのある企業』大賞」でビジネス変革賞を受賞したほか、2023年11月には「ホワイト企業」の認定も受けている。少子化による絶対数の減少もあり、かつてのようには人材を確保できなくなったと西川社長。だからこそ、入社した若手社員の確実な定着を図りたいと、採用にあたってはコロナ禍でもリアルな面談にこだわったと語る。

 「オンラインだけでは、お互いに『そんなはずではなかった』という誤解も生まれます。実際に会い、見学してもらうことでミスマッチのないようにしたいと考えました。40 〜 50歳代の社員には、若手社員の育成について傾聴の大切さを説きました。すぐに答えを押し付けるのではなく、若手の言い分も最後まで聞くことを求めています。

 かつて完全週休2日制にする時に、役員たちから業績が落ちるのではという強い懸念を示されたことがありました。人材の定着には従来の慣習を捨てる必要もあります。私は経営者として必要だと思ったことはぶれずにやり抜くことが重要だと思っています」。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
全社で参加している大阪の展示会「どてらい市」の様子。得意先を招待し、一緒に各メーカーブースを巡ることでビジネスにつないでいる。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
ドイツ・ハノーファーで開催された工作見本市を視察した一行。
意欲があれば、若手社員も海外研修の機会がある。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
営業本部で発行されている取引先向けの業界新聞「西川ニュース」 (年4回発行)。新製品情報やショールーム、社内行事を中心に掲載している。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
新人研修の一環で行っている「フライス盤」研修。実際に工作機械を扱うことで、ものづくりの現場や、得意先が求める加工精度や速度・効率を体感することがねらい。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
本社の営業本部・本社営業所の様子。「心配りが細やかで、できない約束はしない」と西川社長が期待をかける女性担当者も多く活躍する。

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
冊子「育児休業・介護休業 復帰プログラム」や、社員の意識改革のための社内報「ダイバーシティ通信」も社員たちの手作り。

若手社員に聞く
一日も早く、信頼される管理部の一員に

今を見据え、次代に活かす|西川産業株式会社
管理部
河島 ゆきみ 氏

 現在は、勤怠管理や営業車両の管理など経理や総務の業務に携わっています。

 当社に入社した一番の理由は、面接の時のとても話しやすい雰囲気でした。私がそれまでに経験したことなどの話を、興味を持って聞いてもらえたことが印象に残っています。また、新しいことにもいろいろ挑戦している企業であることも決め手となりました。

 女性の活躍推進は「まだ取り組んでいる最中」と言われましたが、職場ではすでに、お子さんの急な発熱で早退する女性社員を快く送りだしている風景も見られます。

 入社後3カ月間は年齢の近い先輩のもとOJTを受けました。期間中、業務の内容や疑問などを気軽に記入したノートをやりとりしたほか、月に1回はその先輩と部門長との三者面談もあり、日々の仕事について気にかけてもらえたことで安心できました。

 将来は、営業所からの問い合わせに自分の業務以外のことも即応できる先輩たちのように、私も社内の皆さんから信頼される存在になりたいです。



同じカテゴリー(ピックアップテーマ)の記事