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今を見据え、次代に活かす ~外国人材の定着と活用が自社の持続的成長の鍵に~| 大阪銘板株式会社


1914年の創業と古い歴史を誇る大阪銘板株式会社。先進的な技術開発を重ねて100余年。今日では非常に高品位な仕上がりが求められる自動車や家電分野のプラスチック外装部品などの製造で高い評価を得ている。社名にある銘板を手がけ始めたのは、法人化した1932年頃で、産業機械に取り付けられていた銘板に目をつけたのが最初だった。その大阪銘板が、今後の発展に向け期待しているのが全社員の約3割を占める外国人材だ。「企業のグローバル展開を考えると、外国人材の活用は外せない」と山口徹社長は語っている。

外国人材のキャリアアップを支援し企業の発展に活かす

今を見据え、次代に活かす ~外国人材の定着と活用が自社の持続的成長の鍵に~| 大阪銘板株式会社
大阪銘板株式会社
代表取締役社長
山口 徹氏
1969年生まれ。大阪府出身。1993年同志社大学大学院工学研究科を卒業後、日系電器メーカー、日本フィリップス半導体事業部(現NXPセミコンダクターズ)を経て、2004年大阪銘板株式会社に入社。2005年代表取締役社長に就任。

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所在地  大阪府東大阪市七軒家18-15
     TEL 06-6745-6309
設立   1932年10月
従業員数 290名(グループ合計)
資本金  9,800万円
年商   99億円(’ 21/3期)
事業内容 工業用プラスチック内外装製品・エンジニアリング、プラスチック製品の製造、超精密金型製造
U R L  http://www.daimei.jp

製造の川上から川下までを担う一貫生産で強みを発揮

 大阪銘板の歴史をひもとくと、1942年にセルロイドに写真版文字を腐食させる技術を開発したのをはじめ、1950年にポリスチレン銘板に適合する新塗料を開発し、1955年には世界初となるテレビブラウン管マスク射出成形に成功するなど、先進の技術開発に積極的に取り組んできたことがわかる。その高い技術力が、かつては家電分野で、現在は自動車分野で発揮され、自動車のフロントパネルやスイッチパネルなど、最高品質が求められる外装部品の製造を担っている。金型から成形、二次加工、アッセンブリーまでグループ内で完結できる一貫生産が強みだ。

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自動車のバックドアの取っ手。軽量化を図るため、金型へプラスチックを射出した後にガスを圧入し製品内部を空洞化する「ガスアシスト成形」は大阪銘板の強み。

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自動車のドアトリムや浄水器の外装など、大阪銘板が手がける外装部品。


 同社が本格的にベトナムから技能実習生を受け入れ始めたのは2008年。長く外国人材の採用活動を率いてきた経営企画室室長の小泉八朗取締役は「ベトナム人技能実習生は真面目で、仕事にも熱心です。しかし、最初の頃の実習生は能力が高かったのに、大勢の実習生が来日するようになった昨今、日本語力の低さも目立つようになり、製造現場の負担が増えました。コミュニケーションがうまくいかないから、品質基準の厳しい自動車関係の仕事に就かせることができなかったのです」と語っている。

信頼できる人材派遣会社との出会いから有能な人材の確保へ

 そうした時に山口社長が参加した投資育成会社主催のミャンマー投資環境視察で、日系の人材派遣コンサルティング会社の存在を知った。そこで出会った若者たちの能力が非常に高いことに驚いた山口社長はすぐに小泉取締役に連絡したという。

 「そのコンサルティング会社では、ミャンマーの大学を卒業した若者の中から優秀な人材だけを登録し、さらに日本語とビジネスマナーまでしっかり教育していました。当社では、まず6人を正社員として採用することにし、現地で約50人に面接を行ったんですが、日本語力の高さはもちろん、日本への理解も深くて驚きましたね。

 採用者を決定した後も、教育の一環として、来日するまでの毎日、その6人から日報がメールで届き、その文章力からも安心して迎え入れることができました」。

 勤勉で目上の人を敬う精神が高く、親日派が多いことから、日本人社員とも気質が合うようだと小泉取締役。その後も続けてミャンマーからエンジニア候補の人材を採用し続け、現在、同社で活躍する外国人材はベトナム人も含めて正社員が22名、技能実習生が29名。全社員の約3割を占めるまでになっている。



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ミクロン単位での精度が要求される金型の磨き作業に携わる外国人材。


具体的な業務内容を率直に伝えて入社後の早期退職の防止に

 ところが、1期目の社員が4年目を迎える頃、課題も見えてきた。

 「日本にも仕事にも慣れ、また同国人のネットワークもできてきた中で、転職する社員が出てきました。技能実習生と異なり、技術ビザの取得で何年も日本で働き続けられる彼らは、8年でも10年でも日本で働きたいと勤労意欲は高いのですが、それが当社でとは限らないわけです。より待遇の良いIT関係企業などへ転職した人もいます」。

 それは日本人社員にもよくある話であり、小泉取締役も「まずは優秀な人材の確保に躍起になっていましたが、日本人の採用活動と同じく、入社前にお互いをよく理解することが重要だと気づかされました。面接で、本人が大学で何を学び、さらに日本で何をしたいのかをしっかり聞いた上で、当社についても事業内容だけでなく、もっと具体的に彼らがどういう業務に就くのかということや、季節によっては厳しい現場環境であるというマイナス面も含めて説明するようにしました。退職者の理由も隠さずに話していますし、日本語が流暢な彼らも本心まで語りきれないのではと、面接時に通訳をつけてもらうようにしました。結果、面接した20数名のうち、応募者は10名以下になりましたが、長く頑張ってもらえるのではと期待しています」。

今を見据え、次代に活かす ~外国人材の定着と活用が自社の持続的成長の鍵に~| 大阪銘板株式会社
大学で機械電子を学んだ後、大阪銘板に入社して4年目のトゥン・ナウン・ヘインさん。一定の技術も習得し、今後は自動化の推進に貢献したいと考えている。


日本人社員と同等の待遇で職能を適正に評価

 同社では、「大銘経営四則」の一つに「製品を造る前に、人を作ろう。」を掲げて、人材育成を重視している。それは外国人材も例外ではない。

 2019年4月から特定技能制度が新しく導入され、技能実習生も特定技能を有していると認められれば、在留期間が最長で5年に延長されることになった。同社でも延長を希望するベトナム人実習生6名の資格取得のために勉強会を開いたり、実際の機械も使わせたりして全面的にサポートしている。その結果、全員が合格し、今も同社で活躍し続けている。

 もちろん、エンジニアとして来日した外国人社員に対しても、金型設計や射出成形技術などの習得のほか、玉掛け技能やクレーン運転などの資格と免許の取得を推進している。「日本で取得した技術を母国で活かしたいと考えているエンジニアもおり、母国で起業してくれれば我々も海外にネットワークを広げることができると期待しています」。

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 同社では、国籍、性別に関係なく正社員は全員、能力と目的達成度に応じた評価システムを採用している。毎年4月に上長と個人面談を行って個々に目標を設定し、半年後に進捗を確認するためのキャリア開発面談を行う。そこで評価された職能レベルに応じて職務手当が支給されるのだ。さらに資格取得者には資格手当も支給される。これらの待遇については、外国人と日本人は全く同等である。

 「以前にタイに新工場を建設した時に、オープンセレモニーを全て現地社員に任せたことがありますが、招待客の皆さんが驚くほど立派なものでした。能力に国籍も性別も関係ありません」と語る山口社長もかつて外資系企業に勤めていた経験がある。多様な人材がいることが会社の活力につながることを実感として確信しているようだ。




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