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今を見据え、次代に活かす| 共和ゴム株式会社

特集
地元の人たちの夢を応援する「地域スポーツ支援」で新たな活力を生み出す

1971 年の創業から50余年、主に工業用ゴム製品の製造販売を担ってきた共和ゴム株式会社(1974 年に法人化)。長く電設資材や土木・橋梁資材などの工業・土木関連の多様な製品群で社会インフラを支えてきた。その共和ゴムでは、サッカーを中心にバレーボールやバスケットボールなど、地域に根ざしたスポーツクラブの支援を積極的に行っている。寺阪剛社長が考える中小企業が地域スポーツを支援する意味について伺った。

地域貢献の一環として地域に愛されるチームや活動を支援

今を見据え、次代に活かす| 共和ゴム株式会社
代表取締役社長
寺阪 剛氏
1971年生まれ。大阪府出身。1994年同志社大学卒業後、共和ゴム株式会社に入社。2004年に代表取締役社長に就任。趣味はサッカー、スポーツジム通い、読書、歴史探究、神社巡り。

今を見据え、次代に活かす| 共和ゴム株式会社
所在地   大阪府枚方市長尾家具町3-4-3
      TEL072-855-1039
設立    1974年1月(創業1971年)
従業員数  90名
資本金   2,700万円
事業内容  工業用ゴム製品の製造
年商    12億円(’ 21/12期)
U R L    https://www.kyowa-r.com/


自社独自のノウハウを蓄積した高付加価値製品で競争力を発揮

 共和ゴムでは、「大手メーカーと競合しない小さい市場でトップシェアを狙う」という寺阪社長の戦略のもと、他社が「生産効率が悪い」と敬遠する領域で独自のノウハウを蓄積し、高付加価値なものづくりで競争力を高めている。例えば、超軟質ゴムや多層成型ゴムといったゴム成型技術において、当初は不良率が80%だったのを自社で工夫を重ねて10%以下を実現している。同社の強みの一つとして「独自性の高い製品」を掲げていることも、「常にこのアイデアが特許の取得、あるいは意匠の登録が可能かどうかということを念頭に置いて開発を行っている」という姿勢に裏打ちされたものだ。

 大阪府枚方市に本社を置く共和ゴムは、枚方市や寝屋川市を中心とした北河内地域をホームタウンにする日本フットボールリーグ(以下、JFL)所属の「FCティアモ枚方」のオフィシャルスポンサーを務めているほか、「パナソニックスタジアム吹田」建設への寄付や、母校の高校サッカー部、日本障害者サッカー連盟などへの支援を行っている。

 サッカーへの思い入れが強いのは、寺阪社長自身が学生時代から、そして今もサッカーを続けていることがあるが、支援先はサッカー関連にとどまらない。同社では、同じく枚方を本拠地とするプロバレーボールチーム「パナソニック パンサーズ」やプロバスケットボールチーム「横浜エクセレンス」などへの支援にも取り組んでいる。


自社製品の提供という無理のないサプライヤー契約で

 「地域スポーツの支援は、地域貢献の一環と考えています」と寺阪社長。「スポンサーである大企業が企業名を冠してチームを丸抱えしているプロ野球と異なり、サッカーは地域に支えられて成立しています。たとえJリーグ所属であっても多くの運営会社が厳しい状況にあります。そもそもプロのチームだけでも全国に58チームもあり、Jリーグを目指しているJFLや、さらに地域リーグ、都道府県リーグを含めると、200チームはある裾野の広いスポーツです。地域に根ざして貢献しているチームを支援することで、ひいてはその地域に当社も貢献したい。そういう思いで支援を始めました」。

 支援の形は、寄付金という金銭的援助ではなく、同社の製品であるスポーツ看板や健康グッズ、スポーツグッズの提供というサプライヤー契約で、無理のない範囲での支援を行っている。

 なかでもユニークなのは、プロバレーボールチーム「パナソニック パンサーズ」への支援のあり方だ。枚方市が同チームを積極的に市のPRに活用、ふるさと納税の返礼品にもパンサーズのオリジナルグッズを指定しており、共和ゴムではそうしたコラボ製品などの企画開発を担っている。「驚いたのは、2万5千円の納税の返礼として、先着20名限定で清水邦広選手らのスパイクを受けられるというものがありましたが、一瞬で定員を満たしました」。


今を見据え、次代に活かす| 共和ゴム株式会社
通信用ケーブルなどの地中埋設工事に欠かせない地中埋設管を接続する「なんでも継手」は、同社の特許技術を使ったオリジナル製品。ワンタッチで接続できる施工性の高さから好評を博している。

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共和ゴムの製品であるスポーツ看板などの提供という形で協賛。


選手のセカンドキャリアの受け皿としての役割にも期待

 また、支援先は地元関西にこだわらず、例えばJFL所属の「東京武蔵野ユナイテッド」のシルバーパートナーにもなっている。

 「同チームは、東京大学と慶応大学の両サッカー部のOBが設立したという異色のチームです。勉強とサッカーを高いレベルで両立させる『文武融合』を理念としており、ジュニアユースのチームでは、サッカーのトレーニングの前に学習タイムがあるのです。プロのサッカー選手として活躍できる人は一握りですから、『プロ選手を目指すことを唯一のゴールとしない』という方針で、社会から必要とされる人材育成に取り組んでいることに深く共感し、応援しています」。

 好きなスポーツでもそれで生活していくことが厳しい世界でもあることをよく知る寺阪社長だからこそ、同社では別の形の支援も行っている。「FCティアモ枚方」の選手やスタッフの雇用だ。

 「JFL所属の選手は、チームからの報酬だけでは生活ができません。そこで、当社では選手やスタッフの生活の安定のため雇用しています。午前の練習を終えた後に出勤し、夜までの6時間の勤務体系となっており、社会保険にも加入しています。もちろん、1ヶ月間の遠征も認めており、当初、社内にはそうしたイレギュラーな働き方をする彼らを快く思わなかった者もいたかもしれません。しかし、平日練習した後に仕事をして、本来は休息日であるはずの週末に試合を行っているのです。ほとんど体を休める暇もなくサッカーに打ち込んでいる彼らの姿をすぐそばで見ていることは、良い刺激になっているのではないでしょうか。今は軋轢もなく、むしろ多くの社員が応援しています」。

 そして現在は、引退した元Jリーガーを正社員にしている。平均的な引退年齢が20代半ばという選手寿命が短いサッカー界におけるセカンドキャリアの受け皿になりたいという考えだ。「人材不足に悩む当社としても、心身ともに鍛えられた優秀な人材を確保できればありがたい話です」。

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共和ゴムに勤務するFCティアモ枚方の選手たち。


利益の還元先を自ら選ぶという発想での社会貢献

 こうした地域スポーツの支援に対する社内の体制としては、スポンサー契約の締結などは寺阪社長自身が行っているが、実務は企画営業の社員たちが担っている。

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 「スポーツ看板の提供にあたっては、そこに掲示するスポンサー名の追加や変更などのデータ管理などを当社が行っています。こうした支援活動について全社員が理解しているとは限りませんが、少なくとも当社の経営の中核を担う社員たちが重要な活動という認識を共有してくれており、協力もしてくれています。

 ゲームを見に行っても観客が千人いるかどうかの世界ですから、スポンサー協賛の広告宣伝効果は期待していません。しかし、きちんと利益を出し納税している企業なら、納める税金の一部を使って、地域スポーツを支援することには大きな意義があると思っています。ふるさと納税と同じで、『当社の利益の還元先を自分で選ぶ』そういう発想なのです。このSDGsの時代に、ぜひ地域スポーツも応援してもらえればと思います」。

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人生100年時代に健康づくりで貢献したいと、アイメック農法による高濃度トマトの生産にも取り組み始めている。

今を見据え、次代に活かす| 共和ゴム株式会社
今後、積極的に健康産業への参入を図りたいと考える共和ゴムのオリジナル製品「アクシスフォーマー®」。「体軸(BodyAxis)を整えて形成する」というコンセプトから生まれたセルフコンディショニングツールだ。

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学生時代から親しんだサッカーで、今も社内チームの現役選手として活躍する寺阪社長。



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